2026年9月27日 ・ 取引のルール

下請法は取適法になった。小さな受注者が使える3つの変化

2026年1月1日、下請法の改正法が施行され、通称は「取適法(とりてきほう)」になりました。「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に呼び名が変わっています。名前だけの話ではありません。小さな受注者から見ると、守られる相手が増え、手形で待たされなくなり、値上げの相談を無視されなくなりました。

変化1 発注元の「資本金」が小さくても、対象になりうる

下請法は、発注元と受注者の資本金の大小で対象を決めていました。資本金が小さい大企業や、資本金を抑えた会社からの発注は、規模が大きくても対象外になることがありました。

取適法では、資本金基準に加えて従業員基準が入りました。どちらかの基準に当てはまれば対象です。

取引の種類発注元(委託事業者)受注者(中小受託事業者)
製造委託・修理委託・特定運送委託、情報成果物作成委託・役務提供委託のうちプログラム作成・運送・倉庫保管・情報処理資本金3億円超資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下
従業員300人超従業員300人以下
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託(デザイン、コンテンツ制作など)資本金5千万円超資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下
従業員100人超従業員100人以下

個人事業主やひとり会社は、ほぼ必ず受注者側の基準に入ります。発注元の資本金だけを見て「うちは対象外だろう」と判断していたなら、従業員数も確かめてください。

対象取引には、製品などの引渡しに必要な運送の委託(特定運送委託)も加わりました。

建設工事の下請は、取適法ではなく建設業法の範囲です。工務店や職人が元請から建設工事を請け負う取引は、下請法の時代から対象外で、支払期日や不当に低い請負代金の禁止などは建設業法で定められています。取適法の話は、同じ工事業者でも、建設工事ではない製造・修理・設計図面の作成などを受けるときに関係します。

変化2 手形で払ってはいけない

取適法は、手形払を禁止しました。さらに、電子記録債権などの他の支払手段でも、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難なものは禁止されます。

これまで「支払いは120日の手形」で、現金にするには割り引いて手数料を負担する、という取引が残っていました。取適法の対象取引では、これはできません。

支払期日の決まりは従来どおりで、委託事業者は、物品等を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定めなければなりません。支払いが遅れた場合には、年14.6%の遅延利息を支払う義務があります。

変化3 値上げの相談を、無視できない

新たに禁止されたもう1つが、協議に応じない一方的な代金決定です。中小受託事業者から価格協議の求めがあったのに、協議に応じない、必要な説明をしない、といった形で一方的に代金を決めることが禁止されました。公正取引委員会は、協議を無視したり、繰り返し先延ばしにしたりして協議を困難にさせることも違反になりうるとしています。

材料費や人件費が上がったとき、「今の単価で続けてください」の一言で終わらせられることがありました。取適法の対象取引であれば、発注元は協議のテーブルにつく必要があります。

値上げが必ず通るという意味ではありません。禁止されているのは「協議に応じないこと」「説明しないこと」です。協議を求めるときは、何の費用がいくら上がったのかを数字で示すと、話が前に進みやすくなります。

従来からの禁止事項も、あわせて確認する

委託事業者には、発注内容の明示、取引記録の作成と2年間の保存、支払期日を定める義務、遅延利息を支払う義務の4つの義務と、11の禁止事項があります。小さな受注者がとくに出会いやすいのは次のものです。

発注内容の明示は、受注者の承諾がなくても、電子メールなどの電磁的方法で行えるようになりました。

フリーランス新法との関係

従業員を使わずに一人で仕事を受けるフリーランスは、取適法とは別に、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)でも保護されます。フリーランス新法は発注元の規模を問わない点で、取適法と線の引き方が違います(一人で受けて、一人に出した時点で「発注事業者」になる)。両方に当たる取引もあります。

困ったときの窓口

取適法の違反が疑われるときは、公正取引委員会、中小企業庁に相談できます。改正で、事業所管省庁にも指導・助言の権限が与えられ、報復措置の禁止に関する情報提供先にも加わりました。相談したことを理由とする不利益な扱いは、それ自体が禁止事項です。

出典

本文の内容は、次の一次情報を確認しています。

この記事は制度の一般的な説明であり、個別の取引が取適法の対象になるか、違反に当たるかを判断するものではありません。具体的な取引については、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口や弁護士にご確認ください。法令や公表資料は改正・改訂されることがあるため、最新の情報をご確認ください。

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