2026年9月27日 ・ 売上と入金

年内に受け取った着手金は、今年の売上ではない

12月にリフォーム工事の契約をして、着手金として代金の3割を受け取った。工事が終わって引き渡すのは翌年2月。このとき、12月に受け取った着手金を今年の売上にする必要はありません。請負工事の売上は、お金を受け取った日ではなく、工事を完成して引き渡した日に計上するのが原則だからです。消費税も同じ日で考えます。

請負の売上は「引き渡した日」

所得税基本通達36-8(4)は、請負による収入金額の収入すべき時期を、物の引渡しを要する請負契約では「その目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日」、物の引渡しを要しない請負契約では「その約した役務の提供を完了した日」としています。消費税も、消費税法基本通達9-1-5で同じ基準を定めています。

着手金や中間金は、工事代金の前受けです。受け取った時点では「前受金」という預かりの扱いになり、引き渡した日に工事代金全体を売上に振り替えます。

日付できごと帳簿の処理
2026年12月10日契約、着手金99万円(税込)を受領前受金 99万円(売上ではない)
2027年2月20日完成して引渡し売上 330万円(税込)。前受金99万円を充当
2027年3月10日残金231万円を受領売掛金の回収

この例では、330万円すべてが2027年の売上です。2026年の所得にも、2026年の消費税の課税売上にも含めません。

「引き渡した日」は、何日と決めればよいか

工事の場合、どの日を引渡しの日とするかには幅があります。所得税基本通達36-8の3と消費税法基本通達9-1-6は、例として次のような日を挙げ、工事の種類や契約の内容に応じて合理的と認められる日のうち、継続して売上に計上している日によるとしています。

たとえば「お客様の完了確認(検収)の日」と決めたら、どの工事でもその日で計上します。年末の工事だけ、売上を翌年にずらしたくて検収日を使い、他の工事は作業結了日で計上する、といった使い分けはできません。

完成した部分ごとに代金を受け取る約束なら、その都度

1つの工事でも、完成した部分を引き渡すたびにその割合に応じて代金を受け取る特約や慣習がある場合は、全体の完成を待たず、引き渡した部分ごとに売上を計上します(所得税基本通達36-8(4)ただし書、消費税法基本通達9-1-8)。同じ種類の工事を多数まとめて請け負い、引渡量に応じて代金を受け取る場合も同じです。

着手金・中間金・残金という支払いの区切りがあっても、それが「完成した部分の引渡し」に対応していないなら、部分完成基準には当たりません。単なる代金の分割払いであれば、原則どおり全体の引渡しの日に計上します。

資材の値上がりで後から増えた代金(値増金)

資材価格の上昇に応じて代金を上乗せする値増金について、消費税法基本通達9-1-7は、契約で上乗せの方法が決まっている場合は引渡しの日の属する課税期間に、相手方との協議で上乗せが確定する場合は金額が確定した日の属する課税期間に計上するとしています。引渡しの後に協議がまとまって増額が決まったなら、その確定の日の売上になります。

消費税の判定にも効いてくる

売上をどの年に計上するかは、消費税の免税事業者の判定にも影響します。課税事業者になるかどうかは2年前の課税売上高で決まるので、大きな工事の引渡しが年末か年明けかで、どの年の売上に入るかが変わり、2年後の判定が変わることがあります(売上が1,000万円を超えた年に、消費税を納めるわけではない)。判定を有利にするために引渡しの日を操作することはできませんが、自分の売上がどの年に入るのかは、正しく把握しておく必要があります。

年末に確認すること

  1. 年内に受け取った着手金・中間金のうち、年内に引き渡していない工事の分を前受金にしているか
  2. 年内に引き渡した工事は、残金が年明けの入金でも、今年の売上に入れているか(売掛金として計上する)
  3. 引渡しの日を、どの基準(作業結了、検収など)で決めているかを、すべての工事でそろえているか
  4. 部分引渡しに応じて代金を受け取る特約がある工事は、引き渡した部分を売上にしているか

出典

本文の通達は、次の一次情報を確認しています。

この記事は個人事業者を前提にした制度の一般的な説明であり、個別の取引の判断を行うものではありません。長期大規模工事の工事進行基準など、ここで扱っていない特例もあります。自分の取り扱いについては、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。通達は改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。

← 読み物の一覧へ