2026年9月13日 ・ インボイス
10月1日から、免税事業者からの仕入れは「50%控除」ではなく70%控除になる
令和8年9月30日で80%控除が終わります。ここまではどの解説も同じことを書いています。問題はその次で、50%というのは改正前の予定です。令和8年度税制改正で70%という段が新設され、終わりも2年延びました。
まず、これが関係する人と、しない人
この話は本則課税で仕入税額控除を計算している買手の話です。次のどれかに当てはまるなら、読み進める必要はありません。
- 簡易課税を選択している — 仕入の実額を使わないので、関係ありません
- 2割特例を使っている — 売上税額から納税額を出すので、仕入側の割合は影響しません
- 免税事業者である — そもそも仕入税額控除の計算をしません
1万円未満の仕入れなら、この話は関係ありません。基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、請求書等の保存がなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます(少額特例)。これは相手が適格請求書発行事業者かどうかを問いません。免税事業者からの1万円未満の仕入れは、経過措置を使うまでもなく全額が控除対象です。ただしこの特例は令和11年9月30日までの措置です。
7割・5割・3割へ。段が増え、終わりが2年延びた
制度開始時の経過措置は、80%が3年、そのあと50%が3年という二段構えでした。これが見直され、下げ幅を小さくして期限を2年延ばす形になりました。
| 期間 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 令和5年10月〜令和8年9月 | 80% | 80% |
| 令和8年10月〜令和10年9月 | 50% | 70% |
| 令和10年10月〜令和11年9月 | 50% | 50% |
| 令和11年10月〜令和12年9月 | 0% | 50% |
| 令和12年10月〜令和13年9月 | 0% | 30% |
| 令和13年10月〜 | 0% | 0% |
70%が2年、50%が2年、30%が1年です。改正前は令和11年9月末で終わる予定でしたが、令和13年9月末まで続きます。
11万円の仕入れで、いくら変わるのか
免税事業者に税込110,000円(税率10%)を支払った場合で計算します。消費税相当額は 110,000 × 10 ÷ 110 = 10,000円です。
| 控除割合 | 控除できる額 | 控除できない額 |
|---|---|---|
| 80%(9月30日まで) | 8,000 | 2,000 |
| 70%(10月1日から) | 7,000 | 3,000 |
| 50%(改正前の予定) | 5,000 | 5,000 |
控除できない額は2,000円から3,000円になります。増える分は1,000円です。改正がなければ3,000円増えるところだったので、増加分が3分の1で済んだということです。負担額そのものが3分の1になるわけではありません。
控除できない分は、消えてなくなるわけではありません。控除できなかった消費税相当額は、仕入れた資産や経費の金額に含めて処理します。所得税や法人税の計算では費用になるので、手取りがまるごと1,000円減るという話ではありません。税込経理か税抜経理かで仕訳の形も変わります。
9月30日と10月1日、どちらの割合になるか
判定するのは課税仕入れを行った日です。請求書の日付でも、支払った日でもありません。ここを取り違えると、9月中に前倒しで払えば80%が使える、という誤解につながります。
- 商品や材料の仕入れ — 引渡しを受けた日
- 外注や役務の提供 — 役務の提供が完了した日
9月に発注して10月に納品された外注は、10月の仕入れなので70%です。逆に9月中に完了した工事の請求書が10月末に届いても、それは9月の仕入れなので80%で処理します。
保守契約や年間契約のように、期間で区切られる取引は自分で決めないでください。いつの課税仕入れとして扱うかは契約の形によって変わります。9月と10月をまたぐ継続的な契約を抱えているなら、顧問税理士に当てはめを確認してください。ここを自己流で按分すると、控除額がそのままずれます。
帳簿に「その旨」が無いと、そもそも控除できない
経過措置は、黙っていて適用されるものではありません。2つの要件があります。
- 区分記載請求書等と同様の事項が書かれた請求書等を保存していること
- 帳簿に、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載していること
求められているのは「その旨が分かること」であって、決まった文字列が指定されているわけではありません。「80%控除対象」「70%控除対象」のほか、「免税事業者からの仕入れ」といった記載でも要件を満たすとされています。記号や番号で表示し、凡例を別に用意しておく方法も認められています。
とはいえ、割合が変わる以上、10月以降の仕入れを9月までと同じ表示のままにしておくのは避けたほうが安全です。会計ソフトを使っているなら、新しい割合に対応した税区分が追加されているかを先に確認してください。8%(軽減税率)の仕入れがあると、税率と控除割合の組み合わせが増えて選択を間違えやすくなります。
個人事業主の2割特例は、3割特例に変わる
ここまでは買う側の話でした。自分が免税事業者から課税事業者になった側であれば、同じ改正の別の部分が関係します。
2割特例は、令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終わります。その後継として、個人事業者に限り、令和9年分と令和10年分について3割特例が置かれました。納付税額を、課税標準額に対する消費税額の3割とするものです。
個人事業者であれば誰でも使える、というものではありません。2割特例と同様に、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと、または課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられなくなった課税期間に限られます。もともと課税事業者だった方は対象外です。
また、適用を受けるには確定申告書にその旨を付記する必要があります。黙っていて適用されるものではありません。
法人にこの延長はありません。3割特例は個人事業者のみが対象で、法人は2割特例が終わったあと、3割特例も使えません。「特例が延長された」という見出しだけを読んで安心しないでください。
どうすればよいか
- 自分が本則課税かどうかを先に確かめる。簡易課税や2割特例なら、割合の話は関係ない
- 10月1日以後の仕入れから、帳簿の表示を新しい割合に合わせる。会計ソフトの税区分が対応しているか先に確認する
- 9月と10月をまたぐ取引は、課税仕入れを行った日で振り分ける。請求書の日付で判断しない
- 取引先が適格請求書発行事業者かどうかを、登録番号の有無で確認しておく。経過措置が要るのは番号が無い相手からの仕入れだけで、しかも1万円以上のものだけ
- 個人事業主で2割特例を使ってきたなら、令和9年分から3割特例になること、申告書への付記が要ることを前提に資金繰りを見る
分岐点は結局、受け取った請求書に登録番号があるかどうかです。SmallWorks の見積・請求 MCP は、発行する請求書に登録番号と記載事項の6要件を揃え、形式をその場で検査します。お使いの Claude や ChatGPT に接続して、会話から請求書のPDFを作れます。
出典
控除可能割合と適用期間、3割特例の内容と適用条件は、国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年4月、令和8年5月改訂)によります。同リーフレットは国税庁「令和8年度税制改正特集」に掲載されています。
- 控除可能割合の見直し — 70%(令和8年10月1日〜令和10年9月30日)、50%(〜令和12年9月30日)、30%(〜令和13年9月30日)。適用期限を2年間延長
- 3割特例の創設 — 個人事業者の令和9年分・令和10年分。免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと等により免税点制度の適用を受けられない課税期間に限る。確定申告書への付記が必要
- 現行の2割特例は令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了
少額特例(税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿のみの保存で控除できる措置)は、国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」によります。課税仕入れを行った日の考え方は、消費税法上の資産の譲受けや役務の提供を受けた時期の原則によるものです。
この記事は制度の一般的な説明であり、個別の判断を行うものではありません。自社の取り扱いについては、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。国税庁の公表資料は改訂されることがあり、本記事は令和8年5月改訂版を参照しています。実際の処理にあたっては、国税庁が公表している最新の資料をご確認ください。
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