2026年9月27日 ・ 消費税

工務店の簡易課税は70%とは限らない。材料支給の工事は60%になる

簡易課税では、建設業は第三種事業で、みなし仕入率は70%です。ここまでは多くの方が知っています。ところが、元請から材料を支給されて行う工事や、道具だけ持って人手を出す仕事は、同じ工事業者がやっていても第四種事業(60%)になります。事業区分は「会社の業種」ではなく「取引ごと」に決まるからです。

簡易課税の6つの区分

簡易課税制度では、売上にかかる消費税額に、事業の種類ごとに決められたみなし仕入率を掛けて、控除する仕入税額を計算します。実際の仕入れの額は使いません。

区分主な事業みなし仕入率
第一種卸売業90%
第二種小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡)80%
第三種農業・林業・漁業(飲食料品以外)、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業70%
第四種その他の事業60%
第五種運輸通信業、金融業、保険業、サービス業(飲食店業を除く)50%
第六種不動産業40%

建設業が第三種なのは、材料を仕入れて形のあるものを作る事業だからです。裏を返すと、材料を自分で持たない仕事は、この前提から外れます。

材料を支給されると、第三種から外れる

消費税法施行令57条5項3号は、第三種事業から「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」を除いています。消費税法基本通達13-2-7は、これを「対価たる料金の名称のいかんを問わず、他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供」とし、第四種事業に当たるとしています。

建設業に当てはめると、国税庁の質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分」は、総合工事業の留意事項として次のように整理しています。

取引区分
材料を自分で仕入れて行う工事第三種(70%)
請け負った工事の全部を他の業者に委託する(いわゆる丸投げ)第三種(70%)
建設業者が行う修繕第三種(70%)
他の事業者から原材料の支給を受けて、建設工事の一部を行う人的役務の提供第四種(60%)
原材料の支給を受けて行う修理第四種(60%)
道具等を持参し、または持参しないで行う人的役務の提供(人工出し)第四種(60%)

職別工事業(大工、左官、塗装、内装など)についても同じ整理で、たとえば「工事用資材を自己で持たず他の事業者の工事に人夫を派遣する事業」や「他の者からの委託に基づくはつり、解体工事」が第四種の例として挙げられています。また、とび工事業としゅんせつ工事業は、それ自体が第四種事業とされています。

「丸投げは第三種、人工出しは第四種」は、直感と逆に見えるかもしれません。判断の軸は、誰が工事の完成を請け負い、誰の材料を使うかです。丸投げでも完成品の工事を請け負っているのは自分なので第三種、人工出しは他人の工事に労務を提供しているだけなので第四種、と考えると整理しやすくなります。

70%と60%で、納税額はどれだけ変わるか

税抜の売上1,000万円(消費税100万円)の工事について計算してみます。

第三種(70%)第四種(60%)
売上にかかる消費税100万円100万円
控除できる仕入税額70万円60万円
納付税額30万円40万円

みなし仕入率の差は10ポイントですが、納付税額は3割以上増えます。材料支給の仕事を70%で申告していれば、その分は過少申告です。

なお、実際の計算では、消費税額は国税分(7.8%)で計算し、地方消費税はそれに連動します。上の表は区分による差を見るための簡略化です。

区分しないと、低いほうに寄せられる

1年のうちに第三種と第四種の売上が混ざるときは、それぞれの売上を区分して記録しておく必要があります。区分していない売上は、その中で最も低いみなし仕入率の事業として計算することになるからです。つまり、請求書や帳簿で「どの工事が材料支給だったか」を分けていないと、自分で材料を仕入れた工事まで60%で計算することになりかねません。

逆に、2種類以上の事業をしていても、1種類の事業の売上が全体の75%以上を占めるなら、その事業のみなし仕入率を全体に適用できる特例があります。材料支給の仕事が売上の4分の1未満なら、全体を70%で計算できる可能性があります。この判定のためにも、区分した記録が必要です。

請求書と帳簿で、今日からやること

  1. 工事ごとに「材料は自社仕入れか、支給か」「人工出しか」を記録する。見積書や注文書の段階で決まっているので、そこで付けるのが確実
  2. 請求書の品目を、材料込みの工事と、手間賃(人工・施工費のみ)の工事で分けて書く
  3. 会計ソフトの売上科目か補助科目を、第三種と第四種で分ける
  4. 年末に第三種の売上が全体の75%以上かどうかを確認する

簡易課税を選ぶかどうかを検討している段階なら、「自分の売上のどれくらいが第四種になるか」を先に見積もっておくと、本則課税と比べたときの有利不利を正しく判断できます。

出典

本文の法令・国税庁資料は、次の一次情報を確認しています。

この記事は制度の一般的な説明であり、個別の取引の判断を行うものではありません。事業区分は取引の実態で判定されます。自社の取り扱いについては、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。法令や国税庁の資料は改正・改訂されることがあるため、実際の処理にあたっては公表されている最新版をご確認ください。

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