2026年9月12日 ・ 電子帳簿保存法
メールで届いた請求書は、印刷して紙で保存してはいけない
取引先からメールに添付されて届いた PDF の請求書を、プリンタで出してファイルに綴じる。メールは読んだら消す。長く続けてきた方法だと思いますが、2024年1月から、この保存の仕方は認められません。問題は紙に出したことではなく、データを残さなかったことです。
紙に出すこと自体は、禁止されていない
ここを取り違えると、話がまるごとおかしくなります。印刷は自由です。手元で見るために出す、現場に持っていく、ファイルに綴じておく。どれも止められていません。
認められないのは、紙だけにして、元のデータを残さないことです。電子で受け取ったものは、電子のまま保存する義務があります。紙はその控えであって、代わりにはなりません。
国税庁の一問一答も、この点をはっきり書いています。要件に沿ってデータを保存した上で、書面に出力して他の書類と一緒に整理することは「問題ありません」(問31)。自分の管理の便宜や、データ喪失に備えて紙に出しておくことは「特段禁止されていません」(問30)。
対象は「電子取引」。紙で届いたものは別の話
線引きは「どう受け取ったか」で決まります。中身が請求書か領収書かは関係ありません。
| 受け取り方 | 扱い |
|---|---|
| メールに添付された PDF の請求書・領収書 | 電子取引(データ保存が必要) |
| 取引先サイトからダウンロードした請求書・利用明細 | 電子取引(データ保存が必要) |
| クレジットカードの利用明細データ、交通系ICの履歴 | 電子取引(データ保存が必要) |
| 紙が出てこないタイプの FAX | 電子取引(データ保存が必要) |
| 郵送されてきた紙の請求書 | 対象外。紙のまま保存してよい |
| 上の紙をスキャンしたもの | スキャナ保存という別制度。任意 |
メール本文に金額と振込先が書かれているだけで添付ファイルが無い場合も、その本文が取引情報なので対象です。消してはいけません。
いつからそうなったのか
改正自体は2022年1月です。このとき、それまで認められていた「印刷して紙で保存する」方法が廃止されました。ただし2年間は宥恕措置があり、事情があれば紙でも構わないとされていました。
この宥恕措置が2023年12月末で終わりました。2024年1月からが本番です。
代わりに猶予措置が置かれました。これは名前が紛らわしいのですが、データを保存しなくてよいという話ではありません。一問一答の書き方が明快なので、そのまま引きます(問89)。
宥恕措置では「出力書面のみを保存する方法で対応することが認められていましたが」、猶予措置では「出力書面のみで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります」。
つまり2つの措置は名前が似ているだけで、中身が逆です。「猶予されている」と聞いて紙だけの運用を続けると、そこで外れます。
令和5年12月31日までに受け取った分は、そのままで構いません。宥恕措置を適用して紙で保存してきたものは、保存期間が満了するまで紙を保存し続け、調査の際に提示できれば問題ないとされています(問13・問89)。遡って作り直す必要はありません。変わるのは2024年1月以降に受け取る分です。
要件は2つ。真実性と可視性
真実性の確保は、次の4つのうちどれか1つを満たせば足ります(問18)。
- タイムスタンプが付いた後のデータを受け取る
- 受け取った後、速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで授受・保存する
- 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて、そのとおり運用する
小規模な事業者が現実的に選ぶのは4番目です。費用がかかりません。国税庁がひな形を公表しているので、事業者名を入れて備え付ければ形になります。
可視性の確保は、ディスプレイやプリンタを備えて画面と紙に出せるようにしておくことと、検索できるようにしておくことです。
検索機能は、多くの小規模事業者では免除される
本来の検索要件は「取引年月日・取引金額・取引先で探せること」「日付や金額を範囲で指定できること」「2項目以上を組み合わせられること」の3つです。専用ソフトを入れないと厳しい水準に見えますが、免除の道が用意されています。
| 条件 | 結果 |
|---|---|
| 税務職員のデータのダウンロードの求めに応じる | 範囲指定と組合せの検索が不要 |
| 基準期間の売上高が5,000万円以下+ダウンロードの求めに応じる | 検索要件がすべて不要 |
| 出力した紙を取引年月日・取引先ごとに整理して提示できる+ダウンロードの求めに応じる | 検索要件がすべて不要 |
どの条件も「ダウンロードの求めに応じる」が外せません。売上高が小さければ何もしなくてよい、という話ではないので注意してください。
「基準期間」はいつを指すのか
ここは問51 が具体的に答えています。個人事業者は前々年の1月1日から12月31日まで、法人は前々事業年度の売上高で判断します。
開業したばかりなら、そもそも検索要件は不要です。問51 は「判定期間に係る基準期間がない新規開業者、新設法人の初年(度)、翌年(度)の課税期間などについては、検索機能の確保の要件が不要となります」と明記しています。2年前が存在しないので、判定のしようがないためです。
なお、ここでいう「売上高」は消費税法上の「課税売上高」とは別物です。営業外収入や雑収入は含みません。一方で非課税売上は含まれるので、免税事業者であっても非課税売上を含めて5,000万円を超えるなら該当しません。事業年度が1年でない法人は、月数で割って12を掛けた金額で判断します。
表の3つ目に注目してください。ここでようやく紙が役に立ちます。日付と取引先で整理した紙のファイルがあれば、検索機能は要らなくなります。つまり「今までどおり紙に綴じる」運用は無駄ではなく、データを消していたことだけが問題だったということです。
整理の仕方も決まっています(問52)。課税期間ごとに、①日付順にまとめた上で取引先ごとに整理する ②取引先ごとにまとめた上で日付順に整理する ③書類の種類ごとに①か②と同じ方法で整理する、のいずれかです。調査のときに慌てて出力するのでは間に合わないので、日頃から出力して整理しておくことが望ましいとされています。
最低限、これだけやればよい
ここは想像で書く必要がありません。国税庁が「夫婦2人の個人事業主で、普通のパソコンとプリンタはあるが請求書保存ソフトは使っていない」という設例に、そのまま答えています(問19)。示されている方法は3つだけです。
- 請求書 PDF のファイル名に規則性をもたせて内容を表示する。国税庁が挙げている例は
20210131_㈱霞商店_110000(日付・取引先・金額) - 「取引の相手先」や「各月」など、任意のフォルダに格納して保存する
- 事務処理規程を作成し、備え付ける
専用ソフトは要求されていません。これに加えて実務上気をつける点を挙げるなら、次の2つです。
- 添付ファイルが無くメール本文が請求書の場合は、そのメール自体を残す
- 保存期間は原則7年(法人で欠損金の繰越がある事業年度は10年)。個人の青色申告者には、前々年分の事業所得・不動産所得が300万円以下なら現金預金取引等関係書類だけ5年でよいという例外がありますが、書類の種類を問わず一律5年になるわけではありません。バックアップは法令上の要件ではありませんが、望ましいとされています(問17)
守らなかったらどうなるのか
法律上は、帳簿書類の保存義務違反として青色申告の承認取消しがあり得ます。ただし一問一答(問12)は、電子データが適正に保存されず出力書面のみが保存されているものがあったとしても、「そのような事実のみをもって、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません」としています。過度に恐れる必要はありません。
より現実的なのは2つです。1つは、税務調査で求められたときに出せないこと。もう1つは、電子取引の電磁的記録に記録された事項に関して隠蔽や仮装があったと判断された場合に、重加算税が10%加重されることです。これは電帳法に置かれた不正への上乗せなので、普通に保存していれば関係ありません。
「消費税では紙でもよい」と書かれた記事を見かけたら、半分だけ正しいと思ってください。消費税法上の保存については、令和4年1月1日以後も書面に出力して保存することが認められています(問29)。ただし所得税・法人税の側では認められていません。片方だけ満たしても保存義務は残るので、結局データを残すことになります。
受け取る側の話をしてきましたが、交付する側にも保存義務があります。適格請求書を交付した事業者は、その写しを7年間保存しなければなりません(消費税法57条の4第6項)。個人事業主でも同じです。SmallWorks の見積・請求では、発行した請求書を版として固定し、訂正時は旧版を残したまま新版を起こします。日付・金額・宛先での検索もそのまま行えます。
まとめ
- 印刷は禁止されていない。要件どおりデータを保存した上でなら、紙に出して綴じてよい。禁止されているのはデータを消すこと
- 紙で届いたものは対象外。判断は中身ではなく受け取り方で決まる
- 真実性は事務処理規程で足りる。費用はかからない
- 検索機能は、ダウンロードの求めに応じることを前提に、基準期間の売上高5,000万円以下、または紙を日付・取引先ごとに整理してあれば不要
- 2024年1月から本番。猶予措置はデータ保存を免除しない
出典
本文中の問番号は、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)のものです。引用した箇所は次のとおりで、すべて同版で内容を確認しています。
- 問12 — 出力書面のみの保存があっても、その事実のみで直ちに青色申告の承認が取り消されるものではない
- 問13 — 令和5年12月31日までの電子取引は宥恕措置により紙保存が事実上可能だった
- 問17 — 保存期間
- 問18 — 保存要件の全体像と、真実性を確保する4つの措置
- 問19 — 個人事業主が専用ソフトを使わずに保存する方法(ファイル名・フォルダ・規程)
- 問29 — 消費税法と所得税法・法人税法で取扱いが異なる点
- 問30・問31 — データを保存した上で紙に出力して綴じることは問題ない
- 問51 — 基準期間の売上高5,000万円以下の判定、基準期間が無い新規開業者の扱い
- 問52 — 検索要件が不要となる場合の、書面の整理方法
- 問89 — 宥恕措置と猶予措置の違い(猶予措置では出力書面のみでの対応は認められない)
問番号は版によって動きます。実際、令和7年6月版で問79 だった猶予措置の項目は、令和8年7月版では問89 になっています。原典を確認するときは、版を合わせてください。
この記事は制度の一般的な説明であり、個別の判断を行うものではありません。自社の取り扱いについては、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。上記の一問一答は改訂が重ねられており、本記事は令和8年7月版を参照しています。その後の改正や改訂を反映していない場合がありますので、実際の判断にあたっては国税庁が公表している最新版をご確認ください。
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